啓蟄
啓蟄や一と鍬ごとの地の匂い 若葉たけを
昨日3月6日は暦に啓蟄とあります。新聞やテレビで「啓蟄とは、二十四節気の一つで、暖かくなって冬眠していた地中の虫が出てくる」ことだと、説明してくれますが、二十四節気とはいったい何でしょうか。
月の満ち欠けで月日を数える太陰暦は、年によって季節と大きくずれるので、太陰暦の上に一太陽年を刻んで24の期間に分け季節の名前を付けて季節を判断できるようにしたのが二十四節気(明治以前は「二十四気」)です。
四季 二十四節気 大略の日取り 七十二候 の関係は以下のとおり。
春 立春 2月 4日 初候4〜8,二候9〜13,三候14〜18
雨水 2月19日 初候19〜23,二候24〜28,三候1〜4
啓蟄 3月 6日 初候5〜9,二候10〜14、三候15〜19
春分 3月21日 初候20〜24,二候25〜29、三候30〜4
清明 4月 5日 以下略
穀雨 4月20日
夏 立夏 5月 6日
小満 5月21日
芒種 6月 6日
夏至 6月21日
小暑 7月 7日
大暑 7月23日
秋 立秋 8月 8日
処暑 8月23日
白露 9月 8日
秋分 9月23日
寒露10月 8日
霜降10月23日
冬 立冬11月 7日
小雪11月22日
大雪12月 7日
冬至12月22日
小寒 1月 5日
大寒 1月20日
この二十四節気七十二候は中国古代の天文学にもとづきますが、陰暦では1年を360日とし、それを15日ずつに区切ったものが二十四節気、その一つの気を5日ずつに分けたものが七十二候というわけです。
歳時記の七十二候の解説を見ると、蟄啓の初候は蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)、二候は桃始笑(ももはじめてさく)、三候は菜虫化蝶(なむしちょうとかす)とあります。
啓蟄の6日に散髪に行ったら、前の大鏡の下になにやら動くものが。ゴキブリの子どもでした。我が家のすぐ裏手は豊かな森で、東側の風呂場は畠に接しています。だから、冬の寒い時期を除いて藪蚊や虫が多いのです。去年はカメムシが秋の終わり頃までたくさんやってきました。夏の盛りには毎年一度は百足の訪問を受けて、連れ合いを絶叫させます(刺されたことなし)。夜、ガラス戸に止まる小さな羽虫を退治に輝く目をしたカベチョロ(やもり)がきます。可愛いものですが、連れ合いはこれにも決して友好的ではありません。
昔、古典で「虫愛づる姫君」という物語があったことを思い出しました。娘らしい化粧もせず、字も書かずひたすら変な昆虫ばかりを可愛がるお姫様のお話ですが、出典を忘れたのでウィキペディアを検索したら『堤中納言物語』でした。毎年啓蟄がやってくると、以前勤めていた養護学校の女の子で虫が好きで、とくにダンゴムシに異常なほどの興味を持ち、鉢植えの下からつまんできたダンゴムシを机の上におくと、いつまでもつまんだり転がしたりしてにこにこしていたのを思い出します。
「虫愛づる姫君」や「ダンゴムシ愛づる女の子」と対極にあって、虫と名のつくものをすべて“蛇蝎の如く”嫌いギャーギャーわめく我が連れ合いですが、今から先が思いやられます。ですが、桃が咲き、蝶が飛ぶ暖かい春は早く来て欲しいものです。