Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

 豊声会演奏会

           
豊声会45周年記念演奏会が終わった。印象の薄れないうちに書き留めておきたいことのつれづれ。今年は豊声会創立45周年記念演奏会にふさわしいものにするため、2年前から選曲、ステージ構成を決めてスケジュールを組み練習してきた。お客様に聞いて楽しんでいただけるステージが必要なんではないかと考え、地元産焼酎「いいちこ」のCMソングで一度は聞いたことのある曲を取り上げることにした。なかでも、「また君に恋してる」はかつて「白いブランコ」でブレイクしたビリーバンバンが歌い、さらに坂本冬美バージョンでもテレビに流れ県民の耳になじんだ曲である。焼酎の製造元、三和酒類KKさんの快諾を受け、第2ステージ特別企画として「iichikoCM曲集」をアップしたのである。地元で活躍している深田宏一氏に 演奏曲6曲の男声4部合唱への編曲をお願いし、今年になってから練習に入った。いま、幹事が今年初めに作ってくれた年間練習計画書をふりかえると、4ステージ全曲を木曜日の定例練習が39回、日曜日の特別練習11回をこなしてきた。夜7時から9時半までの練習時間を、途中から10時半まで延ばして頑張った。
 演奏会に向けて今回特に指揮者の厳しい指導を受けたのは、リズム・メロディー・ハーモニーの音楽の三要素に常に立ち返って練習しようということであった。
この基本にたって自分なりに意識して練習を重ねたつもりではある。
リズム
★第1ステージ愛唱名曲集の「野ばら」と「琵琶湖周航歌」はいずれも8分の6拍子である。これらの曲は、無意識に歌うとついつい4分の3拍子のワルツのリズムで歌いがちであるが、8分の6拍子の揺れるようなリズムで歌わねばならない。指揮者はこのリズムを体感させるために1小節を2拍子で振ってくれるのでこのリズムに乗りやすい。
★今回の演奏曲は弱起の曲アウフタクト)が多かった。弱起の曲とは曲が1拍目からではなく2泊目の弱拍以降から始まる曲のことだが、指揮者の振りと演奏者の出だしが合わずに失敗することがある。また、強拍と弱拍がずれてしまったり、語頭が強弱のいずれにくるのかがわかりにくい場合も多い。指揮者から何度もこの説明を受けたが、個人的には完全に理解して歌えたとは言い難い。ちなみに今回の演奏曲目の中では第1部愛唱歌希望の島・琵琶湖周航歌・見上げてごらん夜の星を・砂上、第2部CM曲集の遅すぎた季節以外の5曲、第4部鳥の詩の4曲全部とアンコールの遙かな友にの14曲が弱起の曲(全24曲の過半数)であり、そうでないのは瀧廉太郎曲集の5曲とアンコールの乾杯だけだった。
クラシックの名曲の中にも出だしがインパクトの強い曲が多い。たとえば、ベートーベンの交響曲第5番第1楽章「運命」のミミミドーの4分の2拍子の2拍目の3連符から始まる弱起、モーツアルト交響曲第40番第1楽章の出だしファミミーファミミーファミミー の最初のファミは2分の2拍子の2拍目の8分音符から出る弱起の曲である。
また、シンコペーション(切分音)という、本来の強弱の拍の位置をを逆にしたり小節をまたいだりする独特のリズムの曲もあった。その最たるものがアンコール曲の乾杯である。
♪かたーいきずなにー  おもいをーよせーてー  かたーりつくせぬー  せいーしゅんのひびー♪この部分の歌詞では 「かたーい」「いをーよせーてー」「かたーり」「せいー」 のところが強調されて歌われる。シンコペーションはジャズやロックでは多用され、パンチの効いたリズムが楽しめる。
このシンコペーションと同じような効果をもたらすものに、俳句の世界では「句またがり」というものがある。たとえば芭蕉の句に「海くれて鴨のこゑほのかに白し」があるが、海くれて(五)鴨のこゑ(五)ほのかに白し(七)と、通常の俳句の形である五/七/五の基本形をあえて崩して、意味としては「海くれて」「鴨のこゑほのかに白し」と、中七が下五にまたがって破調となっている。これを「海くれてほのかに白し鴨のこゑ」とすれば五/七/五と語呂はよくなるが、原句の面白さは減じてしまう。音楽のシンコペーションも俳句の句またがりも常識をちょっと変えることによって違ったリズムの面白さが味わえるということであると思う。。
メロディー・ハーモニー
★正しい音程がとれた上で4声部ががっちり噛み合わさって、初めてきれいハーモニーが生まれる。その基礎となるのは何といっても正しい発声である。このために指揮者から力を入れて指導されたのが、発声の基礎からのやり直しであった。今年前半の練習は、高音部(トップテナー・セカンドテナー)と低音部(バリトン・バス)に別れて音取り練習をしている間に、別室で指揮者から発声法の個人レッスンを受け、特に響く声の出し方を特訓された。こういう特訓を受けてきたにも拘わらず、メロディー部分で全体をリードしなければならぬトップテナーの音が、いつの練習でも下がってしまうという弱点はいつまでも治らず、結果4部のハーモニーが成り立たないという状況を最後まで引きずってしまった。この崩れは本番第1ステージのアカペラでもろに出てしまい、野ばらのトップテナーはどうしたの、という批評を、演奏後3人のお客さんから聞くことになってしまった。ただ、全体的には、厚みのある豊声会のハーモニーは県内のどこにもない合唱団のものだ、という声もあったのは、厳しい発声訓練のたまものだったのかなと思う。
リズム、メロディーの次には歌詞の意味の的確な理解と暗唱である。詩の意味は文語調を含め辞書やネットで理解したが、曲想までを会得するためにはまず歌詞を暗記しメロディーに乗って暗唱できなければならない。その第1歩は歌詞の暗記である。この演奏会の練習で痛感させられたことは、自身の暗記力の驚くばかりの減退であった。情けないことに、いくら時をかけても覚えきれない。恥も外聞もなく試したのは、以前中津メールハーモニーに賛助出演したときにもやった方法である。A5の紙4枚にあえて手書きで歌詞を書き、トイレを含め、部屋の目に着きやすい場所4箇所にべたべた貼って暗記に努めた。
  
本来はメンバー全員が夏までには全部の歌詞を覚えてしまい、楽譜を持たずに練習に臨めるようにしておかねばならなかったと思う。そうすれば、9月以降には音楽の3要素がしっかり理解できたうえで、表情豊かに演奏できたろうなと思う。今回第2ステージのiichikoCM曲集だけ暗譜できず楽譜を外せなかったので、個人としては、甘く見ても今回のできばえは68点ぐらいだったかなと思うが他の団員の自己採点はどうだろうか。再来年、また5年後の50周年記念演奏会まで体力・気力・暗記力が保つかどうか、男声合唱をハモりたいという意欲は今なお健在なのだが…。
 最高の準備、練習を重ねた上で最も大事なことは、絶好調の体調で本番に臨むということであるが、今回は直前になって風邪を引いてしまい、ゲネプロに参加出来なかった。健康管理を怠った故の自責点を差し引き、自己評価は60点である。それでも打ち上げでは達成感で、美酒に酔うことができた。
      
終演後、お客さんに三和酒類提供のおみやげいいちこ  を手渡したせいもあってか、「よかった」「男声合唱って素晴らしい」の声が多かったが、今から徐々に聞こえてくるであろう辛口批評に謙虚に耳を傾けねばなるまい。