Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

 テラピア

一昨日の朝日新聞大分版に、大分城址公園の堀に外来魚のテラピアが繁殖して在来魚の卵や幼魚を食べて困っている、という記事があった。テラピアはアフリカナイル川原産の、暖かい環境に適応して繁殖しやすい、きわめて繁殖力の強い淡水魚である。別府市内でも、別府湾に注ぐすべての川の河口に繁殖している。別府温泉の温排水のため年中水温が高いからだろう。少々汚れた水質の川でも逞しく繁殖している。
唯一温排水が流れ込まない冷川の河口にも、今頃の季節はウジャウジャ浅瀬に集まっている。

普通はチヌ(クロダイ)に似た縞模様の黒っぽい体色だが、繁殖期の今は鮮やかな婚姻色を見せている。

浅い砂場に穴を掘り、横向きになって腹をバシャバシャ砂にこすりつけているのはメスの産卵であろう。付近には黒い背中のオスらしいのが待ち構えているように見える。

テラピアはタンパク源として戦後輸入し養殖されたようだが、刺身や唐揚げにすると鯛に似て結構美味なので、淡水の鯛だとしてイズミダイの名がある。大きいのは30センチ以上に成長するが、河口で小アジを釣っているときにかかって重くてあがらず、0,8号ぐらいのハリスは切られてしまうことがある。河口の汚れたところにいる外来魚だが、釣ろうともましてや食べてみようとも思わない、常に外道の魚である。誰も釣らないからどんどん増えるばかりである。繁殖期の今頃は、別府市内の何処の河口でもちょっと覗いてみるとテラピアの群れを見ることができる。外来魚ではスポーツフィッシングの対象となるブラックバスがいるが、全国の湖や池に繁殖して在来魚を滅ぼす勢いになっているという報道がある。自然の生態系を破壊するから駆除の対象になっているらしいが、もともと誰かが放したのが増えたわけで、ブラックバスは自らが生き子孫を増やすという自然の摂理にしたがっているだけである。生態系の維持と偉そうなこと言ってるが、彼ら外来魚に言わせれば、それは人間様の勝手と言うだろう。
その人間様はどうだろうか。アメリカはイギリスからの移民が東部から西部に向けて開拓していく歴史の中で、もとから住んでいたインディアン(白人が勝手につけた名称で、ネイティブというのがふさわしい)を迫害し追い払い、居住区に閉じ込めた。そのネイティブの中のアパッチ、コマンチ、スー族などは白人と勇猛に闘った歴史を持つが、子どもの頃から熱中した西部劇映画の多くは、ネイティブの部族の弓矢と白人騎兵隊の銃による壮烈な戦いのあと、賢こそうな酋長と威張った隊長との和解で結局ネイティブは居住区に強制的に住まわせられるという結末だったように記憶する。アメリカ合衆国という国は、あとから入ってきた白人が在来の民族の生活圏をおびやかして、東から西へ国土を広げて発展した国である。
冷川支流の浅瀬でいきいきと繁殖行動をしている外来魚テラピアの群れを眺めながら、正常な生態系って何じゃろと思いつつ、テラピア君ガンバレ、とエールの一つも送りたくなった。
5月のうちに早くも梅雨が来て、梅雨を追い上げて台風までがやってきた。
陸奥を避けよ台風暴れ梅雨  
駄句に 古希漢 と書こうとして指が止まった。古希の齢も昨日までだった。