Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

 珍客さんいらっしゃい

近くのTさんは朝早くからジョギングやウォーキングを楽しんでいるが、5月23日の朝、別府市の関の江海岸砂浜で珍しいものを発見。渚から陸に向かって幅60センチほどの何かの跡が続いているのが見られ、もしやウミガメの足跡ではないかと思って「おおいた環境保全フォーラム」に連絡。早速駆けつけたフォーラムの代表が確認したところ、ウミガメが上陸して産卵したものであることがわかり、卵も200個以上見つかった。その卵を波の届かない陸側の砂浜を掘って移し、防護ネットを張っている。
   
  小型のキャタピラが通ったあとのような足跡が2本交差している(日中)
   
       24日(大潮満月の夜)に見た足跡 
    
         防護ネット
この、ウミガメが上陸して産卵したという場所は螢の冷川河口の右岸側で、新しい海水浴場を作るためによそから砂を運び入れた人工の砂浜を建設中のところである。他の産卵地はいずれも自然の海浜であり、人工の砂浜での上陸、産卵は珍しいそうだ。新聞報道によると、月末から継続工事にかかるところを、別府土木事務所は工事の延期を含め対応を協議しているという。人工の砂浜を作った結果そこへウミガメが上陸し、ウミガメが上陸して産卵したからその後の砂浜拡張工事がためらわれるという皮肉なことになったが、ここは人間側が譲歩すべきところか。「大分うみがめネットワーク」のHPによれば、この5月になって、佐伯の間越の定置網に何度かアカウミガメやアオウミガメがかかって保護し、5月21日にはアカウミガメの雌を放流したという。このアカウミガメが23日に関の江海岸にやってきて産卵したのだろうか。
別府市亀川の公園に「白亀塚」というものがある。承和15年(848)、冷川河口の関の江海岸で雌雄一対の白亀が捕獲され仁明天皇に献上した。天皇は「これは吉祥の亀なので“嘉祥”と改元せよ」という勅令を下した。この雌雄一対の亀を神亀彦命(しんきひこのみこと)と神亀姫命(しんきひめのみこと)の2神として池の中に祀ったという伝説があり、亀川の地名もこの伝説に発するという。さて、848年といえば今から1,165年前ということになるが、“鶴は千年亀は万年”という。万年の亀の寿命からすると、1,165歳などというのは若造である。23日に上陸したと思われる亀を誰も見ていないが、きっと亀川の白亀塚に祀られている白い亀の仲間の、シロウミガメに違いない。砂浜と遙かな海原を眺めていると、そんなバーチャルな夢の中に遊びたくなってくる。
        
        
鹿児島の吹上浜や、宮崎日南海岸などウミガメの産卵地はつとに名が知られているが、産卵や子亀の誕生を見るツアーで環境が荒らされてカメが寄りつかなくなるということも聞く。冷川にぼつぼつ螢が出始めた。関の江海岸にはウミガメが産卵と吉祥が続くが、螢やウミガメに対しては、ホモサピエンスは常に遠慮して控えめにつきあうことが肝心だろう。
        
            今年の初蛍
明滅のひとつふたつや初螢 渓石