Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

 落し角

4月30日、亡父の祥月命日の墓参りに帰ったおりに、生前の兄が作っていた山の梨畑跡に姉と一緒に行ってみた。今はそこに、ウメ、サクラ、サルスベリ、モクセイ、モクレン、コブシ、ハナミズキ、ツバキ、サザンカ等々花の咲く樹木を植えているが、この場所を、気楽にやってきて季節の花を楽しもうと「季楽苑」と私が名付けた。姉が管理しているこの「季楽苑」には、それぞれの季節の花を楽しみにときどき訪れている。この日は、コブシがなごりを留め、ハナミズキが見頃であったが、植わっている木々の徒長した下枝を落とした。「季楽苑」は、最近増えたイノシシやシカの食害から花木を守るために、金網で柵を巡らせてある。上の段畑の藤棚はまだ蕾であるが、ここは柵をしていない。ここで珍しいものを発見、鹿の角である。
立派なもので、抜けてからかなり時間がたっていると思われる。柳の下のドジョウを求めてあたりを探し回ったら、あった。こんどはやや小ぶりである。
帰って測ってみると、大きい方は46センチ、小さい方は28センチあった。
2本並べてみると大小の違いがわかるが、むろん別々の牡鹿のものであろう。
春になって雄の鹿の角が自然に落ちるとは聞いていたが、落ちているのを見て拾ったのは初めてである。この角は「落し角」といって、俳句歳時記では春の季語となっている。

春、雄鹿から抜け落ちた角のこと。鹿の角は4月頃に落ち、初夏にまた再生する。新しい角はビロード状の柔らかい細毛に覆われ、袋角と呼ばれる。袋角は敏感なため、鹿はこれに触れられるのを極度に嫌う。角は再生するたびに大きくなり枝が多くなる。袋角は夏の季語。(角川書店『俳句歳時記』第3版)

風強く晴れたる山の落し角 宇佐美魚目
この山の畑は風の通り道でいつも強風が吹き、この日も何度も帽子を飛ばされた。しかるに、この句は納得の句である。先達の俳人もどこかで同じような経験をしたのであろう。
拾って持ち帰ったのはいいが、置き場所に困っている。立派な床の間があって、名刀の一振りでもあれば飾っておけるのだが…。連れ合いは「気持ち悪い。目につかぬところに置いて」と、角を持ち帰って以来すこぶる機嫌がよろしくないのである。
落し角拾ひしあとの思案かな 古希漢