Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

 ザクロ(石榴)

散歩中、亀川の民家の裏にザクロを見つけた。歳時記では石榴の花は夏の季語、石榴(実石榴)は秋の季語である。なのに、この石榴の木には花が咲き、硬く小さな実があるかと思えば、真っ赤に口を割った熟れた果実もある。不思議だ。何でもかんでも今年の夏の暑さのせいにしてしまうが、1本の木が花と熟果を同時につけるという珍現象も今夏の異常高温気象のせいなのかも。 
   
   
   
ザクロはペルシャからインド北西部の原産で、日本には平安末期に中国から伝来したらしい。中国では中秋の名月祭に欠かせない果物だそうだが、山梨県では果樹として栽培しているとか。
きょう、割れて真っ赤な実を口にしたが、やたらと種子ばかり多く、甘酸っぱいが酸味が強くおいしいとは思わなかった。
ザクロは人肉の味に似ていると何かで読んだことがあるが、人肉を食った経験のない者にはわかるはずもない。このことはたしか鬼子母神  の話の関連であったと思い、調べて確かめた。
千人の子を持つ(40人の側室に55人の子を生ませたという徳川11代将軍家斉さんの比ではない!)鬼子母神は他人の子をさらってきては食っていた。あるとき、彼女が一番かわいがっていた末っ子がいなくなり、狂ったように探したが見つからなかった。そこで釈迦が、「たった一人の子を失っただけでそのように悲しむが、おまえは多くの人の子をさらってきては食ってしまった。おまえに食われた子の母親たちの気持ちがわかったか」と諭し、人肉の味によく似たザクロの実を与え、鬼子母神を改悛させた。以後鬼子母神は子育ての神、安産の神様として崇められたという。
いささか怪奇話風であるが、鬼子母神法華経の守護神として、日蓮宗のいくつかの寺院にはこの鬼子母神像が祀られていて信仰を集めているらしい。
今でも、ぎっしり詰まった赤い種子を持つことから、ザクロの実はは多産の象徴として、子宝を授かるようにとかいって女性が好むともいうが、さてゴリヤクのほどは?  
歳時記でザクロを季語として詠んだ俳句を探してみたら、何冊かの手持ちの歳時記のうちの2冊(角川書店雄山閣)の例句の筆頭に、
露人ワシコフ叫びて石榴打ち落す という西東三鬼の句があった。
ロシア人のワシコフさんが何かロシア語で叫びながら、長い棒で石榴を打ち落としているという光景なのだろうが、「それがどうした、なんにもおもしろいことはねーじゃねーか」と、シロートの自分にはさっぱりピンこないのである。 
三鬼さんの句はほかに、水枕ガバリと寒い海がある を思い出すが、昭和初期の新興俳句、モダニズムの俳句はどうも取っつきにくくわかりにくい。が、おそるべき君等の乳房夏来るは、毎年夏が来れば思い出す。遙かな尾瀬どころではない、強烈なインパクトのある句で、共感できてわかりやすくて大好きな句である。戦後の女性がはつらつとしてくるころの句であるが、三鬼さん、平成の今日のヘソ出しルックを見たらどんな句を作りますか。