Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

 はじける若さ

北部九州総体の陸上競技第2日目(7月31日)の観戦に、大分銀行ドームに行った。ドームへはサッカーの大分トリニータの負け試合観戦以来だ。この日のお目当ては、日本人初の100メートル9秒台の記録を出すかもしれない、京都洛南高校桐生祥秀君の走りを直に見たいためだった。
 この日は10:50から予選、14:30から準決勝、16:20から決勝というプログラムであるが、桐生君を見ようと、100メートルコースの見える付近の観客席は朝早くからいっぱいの観客で埋まった。その中の一人として10時にはフィニッシュラインに最も近い席に、コンビニおむすびとお茶を持って陣取った。予選スタート地点によく目立つピンクのパンツ(その昔、全国高校駅伝で優勝したときの中津商業高校も、たしかピンクパンツだった)の桐生君を双眼鏡で覗くと、落ち着いている様子。
       
           予選のゴールシーン
 予選は8組中の第1組。いいスタートを切って40メートル前から身体を起こし、一気にスピードアップ、ゴール手前では流してフィニッシュ。それでもタイムは10秒50と他を寄せつけない。
 準決勝は予選8組の各2着プラス2。桐生君は3組の中の1組に出走。これも力強い走りで余裕でゴール前は流しても3組9人中の最速タイムの10秒32でフィニッシュし、他の追随を許さない。残念ながら準決勝のゴールの場面は、撮影のタイミングを逃してしまった。
 決勝は準決勝で残った精鋭8人のデットレース。揃ってスタートしたあと40メートルあたりからぐんぐん加速してトップスピードの乗ったままフィニッシュ。もも上げとスライドを伸ばす腕ふりのバランスの良さが、彼の早さの秘密か。
        
           決勝のゴールシーン
出るか9秒台!と観客は期待したが、速報値は10秒19。一瞬の溜息のあと、大会新記録の放送に万雷の拍手。
       
大型スクリーンには、レース直後の弾む呼吸を整えつつ「高校生の最高の大会で優勝できてうれしい」とインタビューに応え、観客に手をあげた。
       

男子4×100R決勝も注目のレースである。個人種目ばかりの陸上競技の中で、唯一チームプレーの緊張感と面白さが味わえるのが400リレーと1600リレーである。各高校の精鋭4人が直線が得意な者とコーナリングが上手い選手との組み合わせで、確実なバトンパスリレーをつなぐこのリレー競争は、その日のトラックレースの最終に行われるのが常である。テレビで見た8月1日の400mリレーの決勝は、第3走者から第4走者へつなぐ場面では各チーム混戦であり、京都洛南高校はアンカー桐生君が6位でバトンを受けて、猛烈な追い上げで前の5人を追い上げ抜き去って優勝してしまった。タイムは40秒21で、洛南高校がこの種目初優勝を飾った。ここでも残り20mで先頭に立つという韋駄天ぶりであった。
 テレビで見た男子200m決勝は、第3コーナーから直線に入って一気に抜け出し、後続とぐんぐん差を広げそのままフィニッシュ、20秒66のこれも100mに続く大会新記録で優勝。あっぱれ19年ぶりの3冠を達成。末恐ろしい17歳スプリンターの誕生である。8月10日のモスクワ世界選手権大会で世界の一流ランナーと、日本代表として堂々と戦って欲しい。
 女子100m決勝は埼玉栄高校土井杏南さんが11秒70で2年ぶりの優勝。腰痛で3ヶ月のブランクがあったとそうだが、予選、準決勝、決勝と危なげない走りで完全復活ぶりを見せた。
       
 気温35度の猛暑の中、壮絶な闘いを繰り広げた女子5000m競歩は、3000メートル過ぎまでをダントツの1位で走っていた選手を逆転して、京都立命館宇治高校の河添香織さんが22分45秒8で優勝。どちらかの足が常に地面についていなければならぬ競歩という競技は、難しい競技だ。跳んで走ってはならず、あくまで歩く速さを競うという、文字通りの競歩なのである。速く歩こうとしてつい走ってしまうと、つまり瞬間的にも両足が地面をはねれてしまうとたちまち失格となる。ゴール後、数人の選手の膝がガクガクと崩れてその場に座り込んでしまうほど、猛暑の下の過酷なレースであった。このシーン、見ている方も涙が出そうだった。
 もう40年も前になるが、インターハイに監督として高校生を引率したことが2度だけある。女子800メートルの選手を伊勢市大会に、男子幅跳びの選手を横浜市大会に連れていったが、そのときは今回のようにのんびり観客席に座ってトラックやフィールドの競技を見るということは勿論許されなかった。
 今回、地元開催とあって初めて観客席から、久しぶりに若人の熱戦を応援したが、昔に比べて選手のユニフォームがカラフルになっていることや、投擲の槍や砲丸などを運ぶリモコン車(鶴崎工業高校と書いてあったが、生徒の作製なのだろう)が活躍していることに驚いた。また、何よりも進歩しているのは、大型スクリーンで選手の表情やリプレイシーン、記録速報が見られることであった。 
 今回は地元開催のインターハイ陸上競技の観戦だったが、駐車場の混雑と猛烈な暑熱を凌ぐ充分楽しめた1日だった。駐車場への誘導や、観覧席でごみを集める高校生など、多くの地元高校生のボランティア活動が見られた。他種目の競技会場でもそうだったのだろうが、選手の競技を支える裏の活動が大会の華々しい競技の陰にあることを思い、一観覧者としても感謝したい。