Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

 別府市中央公民館

 先日参加した別府短歌大会や別府俳句大会は、別府市中央公民館で開催されました。この別府市中央公民館は、「近代化遺産」に位置づけられた由緒ある歴史的建造物なのです。
       

 別府市中央公民館は、別府市制施行記念に「別府市公会堂」として昭和3年(1928)に、当時の北町上の麻生別荘五六庵跡地に建設されました。「国際都市別府にふさわしい文化的建築を」という初代市長・神澤又市郎の発案でした。鉄筋コンクリート、一部鉄骨造りで、地上2階建て地下1階。当初は正面に石造りの大階段があり、入ったところが1階(現在の2階)で大ホールと休憩室、2階(現在の3階)には貴賓室と食堂、地階(現在の1階)には大食堂、浴室、ビリヤード等があったから、当時はきっと「別府の名所」として近郊から見物客が訪れていたことでしょう。設計者は、近代ヨーロッパ建築に詳しく、当時の日本の建築界をリードしていた逓信省吉田鉄郎技官でした。それに別府市の池田三比古技師が製図と現場を担当しました。昭和2年(1927)1月14日に起工し、翌年3月29日に竣工式典が挙行されています。総事業費429,730円90銭でした。
 
建設当時の公会堂
 現在までに何度か改修されましたが、一番大きな改修は正面玄関にあった堂々とした石造りの階段が撤去されて、今は正面玄関となり、かつて地階であった現在の1階の講座室につながっています。今も、1階から2階への踊り場のステンドグラスや、石造の壺のオブジェやライオンの頭を模した吐水口などが残っています。1階(現在の2階)のメインホールは761席あり、オペラも上演できるオーケストラボックスを持った本格的なもので、国際都市別府にふさわしい公会堂でした。このホールは壁と天上の境がなく二次曲線で造られ、数枚の壁が波状となり舞台より客席に広がって来る感覚の空間で、音響効果がすばらしいと折り紙付きです。
設計者の吉田鉄郎氏は、後に東京中央郵便局や大阪中央郵便局の設計も手がけました。総務大臣を辞任した鳩山郁夫氏が、「東京中央郵便局の建物を壊すとは文化財の破壊だ。けしからん」と激怒したのもむべなるかなですね。
 現在も公民館として各種の会議や学習活活動、発表会、研修会で利用頻度の最も高い公民館の一つで、毎月3回の講座で使わせて貰っていますが、改めて歴史の重みを感じます。
歴史的にも造形的にもすばらしく貴重なこの建物を、「復元」して活用しようという計画があります。(参考:『べっぷの文化財 第27号』)