Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

 聖母マリアの夕べの祈り


以前、NHK・FMラジオの朝6時からの「朝のバロック(今は、バロックの森)」をよく聴いていた。中世の教会音楽の荘重な古楽器の響きや、合唱の分厚いハーモニーの魅力を味わった。また、ミサ曲や典礼音楽を合唱で何度か歌った経験から、バロック音楽の、あの魂を沈静させるような独特の美しさに深く惹かれた。
一昨日の22日に、パトリア日田バロック時代初期の大作曲家クラウディオ・モンテヴェルディが1610年に作曲出版した『聖母マリアの夕べの祈り』を聴くことができた。豊後ルネサンス音楽祭2010事業の一環の演奏会である。この曲は、今からちょうど400年前、日本では江戸幕府2代将軍秀忠の時代に作曲された、カトリック教会の夕べの祈りの音楽である。
◎ 指揮 濱田芳通
◎ 器楽 アントネッロ  
コルネット 3人
  ・サクバット 4人
  ・ドルツィアン 1人
  ・リコーダー  3人
  ・バロックヴァイオリン 3人
  ・ヴィオラダガンバ 2人
  ・ヴィオローネ 1人
  ・チェンバロ&ハープ 1人
  ・ポジティフオルガン 1人 
◎ 合唱 ラ・ヴォーチェ・オルフィカ  
  ・ソプラノ 13人
  ・アルト 14人
  ・テノール 13人
  ・バス 8人
     日田高校合唱部(22人)
◎ ソリスト 
  ・ソプラノ  花井尚美弥勒忠史  
  ・テノール  七条信明、青地英幸、川島尚幸
  ・バ ス   小笠原義敬、小田川哲也
聖母マリアの夕べの祈り』は全13曲から構成されている。6声から10声に別れた重厚な合唱、テノール、ソプラノの独唱や二重唱・三重唱などの張りのあるしかも軟らかい響き、それに重奏の通奏低音に支えられた古楽器のアンサンブルによる華麗な響きは、日田杉を基調とした木造のホールを軟らかく包んだ。狂いのない重厚なハーモニーと、初めて聴く古楽器のアンサンブルにすっかり魅了されてしまった。
臨席のSさんがささやいた。
「ソプラノの弥勒忠史は何と読むんだろうか、ソプラノだから女 でしょうが。」
「タダフミでは男名だし、なんとかアヤかな。もしかしてタダフミという男性で、ソプラニスタかな」と私。
あとでわかった。5曲目のモテットのソプラノ二重唱で、向かって右に立つ女性と左に立った男性がともにソプラノの声で二重唱を歌ったのだ。この男性がプログラムのソプラノのひとりの弥勒忠史氏だったのである。彼はれっきとした男性でソプラニスタ声楽家だったというわけである。
ソプラニスタといえばや岡本知高や「もののけ姫」の米良良一な名が浮かぶが、ソプラニスタカウンターテナーはどう違うのか、弥勒忠史、岡本知高、米良良一はどっちなんだろうと、ネットで調べてみた。
○ ソプラニスタ
女声のソプラノと同じ声質や声域を歌う男性の声楽家カウンターテナーより高い(C4〜E6)声域を出すことができる。
カウンターテナー
裏声や頭声で女声のメゾソプラノ・アルトの音域を歌う男性声楽家
カストラート
中世ヨーロッパで、変声期前に去勢して少年の高音を保った男性の声楽家。中世のカトリック教会には女声が入って喋ったり歌ったりできなかったので、女声にあたる高音部をカストラートに歌わせた。今日は存在しない。
ウィキペディアによれば、ソプラニスタの日本人歌手として、岡本知高、木村友一をあげ、カウンターテナーとして、池田滋、藤岡宣男、弥勒忠史、米良良一をあげている。
いずれにしてもカウンターテナー弥勒忠史は、「男声ソプラノ」としてソプラノ二重唱を歌ったわけだが、女声に勝るとも劣らぬ魅力的な声だった。
午前中はお彼岸の墓参りをして墓前で独り「南無阿弥陀仏」と何度か唱え、午後は教会音楽の合唱の中の「アーメン」の見事なハーモニーを聴くという、柄にもなく仏と神への信心深い人間になった一日だった。