Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

襖の下張り

 過日、亡父の祥月命日の墓参りに実家に帰りました。例年真っ盛りのサツキ、シャクナゲ、ヤマブキなどの庭の花々が今年はもう蘭けていて、季節のずれを感じました。
      
 最近、座敷の古くなった襖4枚を新調し、古い襖を焼却する前に実家の姉から連絡を受けていたので、墓参ついでに襖の下張りを剥いでみることにしました。以前、県立先哲資料館主催の古文書解読講座を受講したとき、講師の学芸員さんから古襖の下張りに貴重な史料が隠れていることがあると聞いたのを思い出したからです。父が元気な頃の昭和35年に作った襖ということなので、それほど古いお宝ものの古文書や「四畳半襖の下張り」のような興味深いものは期待できませんが、さて、取りかかってみると意外と大変です。下紙は3重、4重に裏張りしてあり和紙あり酸性紙あり、墨字あり活字ありでべったりと糊付けされています。内容は役場の反古紙を大量に貰ってきたもののようで、1枚目の3分の1ほどを剥いでみた限りでは、明治・大正。昭和初期のものが多いようでした。噴霧器で湿らせてはぎ取るのですが湿りすぎると和紙は繊維が解れてしまったり、破れたりします。表具師は、そもそもはぎ取られて読まれることを予想だにしないのですから当然ですが、つづきの文書が切れていたり、関連のあるものが全く別の面から出てきたりといささか疲れますが、時間を惜しまぬ根比べとなります。家に持ち帰って調べてみると、大正2年の「第十二師団馬匹徴發事務規定」なるものが出てきました。陸軍が軍用馬にするため一般から強制的に馬を徴用するときの規定ですが、≪徴發馬匹配当名簿≫には、馬名・年齢・體尺・毛色・用役・住所・馬匹所有者をなぜか警察署に提出することとなっています。また、≪馬匹徴發通知書≫には、乗馬何頭、輓馬何頭、駄馬何頭と馬の供出者が町村長に提出することが求められました。これらはすべて付表として提出文書の様式を示したもので、どこの誰が何頭供出したという史料は今のところ見えません。
 昨年8月の句会に、徴用の馬還らずに終戦日 初代 があったのを思い出しました。