Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

『朝日歌壇2009』

     
 いつだったか、朝日出版から「昨年、朝日歌壇に入選したあなたの短歌を『朝日歌壇2009』に載せていいか」という意味の掲載許諾伺いのような文書を受信していました。○○月△△日までに返事をいただきたい、返事のない時は承諾戴いたものと判断します、などとあったがつい返事を出すのを忘れていました。その文書に、たしか四月下旬に『朝日歌壇2009』が発売されるとあったので、新聞販売店に1冊注文していたのがきょう届きました。少年のように少しドキドキしながら自分の歌を探し、次の3首を我が目で確かめました。
☆4月第2回 佐々木幸綱選(1席)
「なだしお」に若き甥逝きて二十年「あたご」の父子未だ揚がらず
〈評〉第1首、事件関係者にとっては、二十年たっても忘れられないのだ。横須賀沖で海上自衛隊の潜水艦「なだしお」と「第一富士丸」と衝突し、沈没し、三十人が死亡、十七人が負傷した事件。
☆6月第3回 高野公彦選(6席)
死者の数、万を単位に数えらるミャンマー、四川、日本の自死
☆10月第1回 馬場あき子選(1席)
秋の日のムンクも埴輪も口開けてムンクは悲し埴輪は愉し
〈評〉第1首はムンク「叫び」と埴輪の口を対比的に捉えてみせた。時代も背景もちがう二つは本来対比できるものではないが、詩歌の世界でのみ可能なこと。

 朝日歌壇は、4人の選者が10句、計40句を選し毎週月曜日の朝日新聞朝刊に入選作として公開されるものです。米国の獄中にある郷隼人さんの歌はほとんど毎週入選しています。最近では、住所欄が「ホームレス」とある公田耕一さんもたびたび入選しています。両者とも置かれた環境の中で、赤裸々に三十一音におのれを晒していて、心に響く歌ばかりです。
 この本のあとがきで知ったことですが、朝日歌壇は1910年、石川啄木を初代選者に迎えてスタートを切り、1955年以降は選者共選のかたちをとって今日に至り既に半世紀になります。毎回紙面には40首が載りますが、毎日届く葉書は平均四百枚、三百枚を下ることはないそうです。
私の控えを見ますと、昨年は14回投稿してそのうちの3首が入選していますが、けっこう入選率は高い方でしょうか。俳句に比べて主観的、叙情的に流れやすい短歌は余り多くは作っていません。コレッという閃きが我が身に走ったとき以外は歌になりせん。だから、3首の入選はまぐれかビギナーズラックといえると思います。今年は3月に1首、4月に1首しか投稿していないので入選するわけがありません。それにしても、豆腐づくりの歌に始まる短歌で朝日歌壇にほぼ毎回入選、しかも複数の選者に1席に選ばれていた畏兄、故・松下竜一の才能には今も驚嘆するばかりです。