Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

沈丁花

    
  じんちょうげ
げんかんの戸をあけたら
プーンといいにおい
あっ じんちょうげだ
いつのまにさいたの
おかあさんが死んでから
うら口からばかり
出はいりしていたので
少しも気がつかなかった
おかあさん
おかあさんのすきな
じんちょうげがさいたよ
私はげんかんの戸を
いっぱいあけた    
        古田 幸

    
 男声四重唱の組曲として作曲された「おかあさんのばか」は、1965年春、ダーク・ダックスにより初演された。この曲は古田幸(みゆき)さんが6年生の時に書いた12編の詩に、中田喜直・磯辺淑が作曲したものである。おかあさんを亡くした少女の同名の詩集を読んだダーク・ダックスが感動し、朗読を交えて企画・構成した組曲である。
 豊声会は1993年演奏会で歌って以来何度か演奏しているが、涙をこらえながら歌った記憶が甦る。「雨」や「月光とピエロ」のように、また歌いたい曲である。
  沈丁花
ジンチョウゲジンチョウゲ属、中国原産の常緑低木。沈香と丁字を合わせたような香気をもつというのでこの名がある。我が国には江戸時代に渡来した。冬すでに葉の間に赤紫の蕾を蔵し、早春から強い芳香とともに花を開く。雌雄異株で日本では雌株を殆ど見ない。
この時期、我が家の玄関を開けてプーンといい匂いがすると、毎年「おかあさんのばか」を思い出して幸ちゃんの詩を口ずさむのが常である。
 鎌倉の月まんまるし沈丁花  高野素十