ヒジキ(鹿尾菜)
春になると木々が芽吹く。やがて若葉が育ち、青葉となって繁る。海の中ではノリが育ちワカメやアオサなどの海藻も繁っていく。
亀川漁港では今、ヒジキ干しが盛んである。先日も海から揚がったヒジキを干しているところだった。春休みで、子どもたちも手伝っている。
採取したばかりのヒジキは黄褐色だが、太陽の下で乾燥させると真っ黒になる。これを水産加工業者が買い取って蒸し、再び乾燥させて製品化するのだそうだ。店で買って水に浸して戻し、油揚などと一緒に煮るとおいしい。市販の弁当にもちょこっとおかずに添えられている。
「ヒジキは生では食べられんのですか。」と尋ねたら、「生には毒があるんじゃ。」という答え。「えっ!」と思い、帰って早速ネットで調べてみた。
英国食品規格庁が海草類のヒ素の含有量を調べたところ、コンブ、ノリ、ワカメなどよりヒジキのヒ素含有量が最も多く、有機ヒ素より健康被害が高い無機ヒ素を含むヒジキをあえて食べないように勧告した。このイギリスの勧告に対する日本の厚生労働省は、種々の検体分析や検査の結果、次のように報告している。
日本人の1日の海草摂取量14.6g
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1日あたりのヒジキの摂取量0.6g
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体重50kgの人が毎日4.7g以上のヒジキを継続的に摂取しない限り限度を超えることはない。
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バランスのよい食生活を心がければ健康上のリスクが高まることはない。
また、江東区保健所が乾燥ヒジキ10の検体(国産7,韓国産2、中国産1)を分析したところいずれもヒ素が82.5mg/kg検出された。ヒ素は水に溶け出すので、以下のような正しい調理法で摂取すれば、カルシュウム・カリュウム・リン・鉄分を含むおいしい食材として賞味することができるのである。
◎ 乾燥ヒジキはたっぷりの水で30分以上水に戻してから調理。
◎ 水戻しに使った水は、調理に使わない。
◎ 水戻ししたあとは、ボールに入れた水で2〜3回洗い、よく水を切る
◎ 茹でるときは、水戻ししてから茹でる。
今、関の江海岸の北の磯浜には、数多のヒジキが海中に揺れているのが見える。ヒジキに鹿尾菜という字を当てるが、あまりに鹿の尾には似ていない気がする。
海ふくれきては鹿尾菜の岩に寄す 長倉閑山
参考:東京都福祉保健局 食品衛生の窓