ムカゴ
毎年今頃の時期になると、散歩途中の傍らの木や藪に目が移る。ムカゴを探すためである。ムカゴはヌカゴともいうが、ヤマイモの珠芽のことで、種類によって褐色や、暗緑色を呈した黒豆大ほどのものである。生を噛むとヤマイモの粘りがある。煎ったり、ご飯に炊き込んだむかご飯は、素朴な野趣に富んだなかなか乙な味である。今年はもう3回も、ほこほことした零余子飯を味わった。
先日の句会でKさんの、共に在ることの幸せむかご飯 が高得点を得たが、ほかほかしたシニア夫婦を彷彿させる素敵な句だ。
ムカゴを採ろうと手を伸ばすと、すぐにぽろぽろと零れ落ちてしまうものだ。だから、ホンカクテキに採ろうとするなら、傘を逆さにしてその中に落とすようにするとよい。
8年前、俳句雑誌の「紙上添削教室」に投稿したら、「添削不要句」として下のように掲載された。
[原句] おほかたは藪に零れて零余子採り
[作句意図]
毎年、庭先の山芋にできるむかごを採ります。むかごを辞書で調べて、「零余子」と書くと知り、「零れて余った子」とはなるほど、と納得しています。
[評]
後で字を当てたのでしょうが、なかなかうがった文字ですね。この作「おほかたは藪に」が、体験から出た把握で諧謔味のある作品となっています。