Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

タンポポ



今頃あちこちに黄色の鮮やかなタンポポを見かけます。側溝の蓋とアスファルトの間など、全く土がないところにもよく咲いていますが、このド根性花はなかなか庶民的な感じがします。先日の句会で、主宰がタンポポの花が絮(わた)になりかけているのを見かけたら、写真に撮って見せてください、と云われた。そういえば、花が絮になりかけのところをいまだかつて目にしたことがありません。以来いつもの散歩の路傍に気をつけて探しているけれど、蕾か花か白い絮になってしまっているものにしかまだ出会っていません。黄色い花が真っ白な絮に変化しているところに出会った方は、是非カメラに収め、見せてください。
 ところでタンポポの語源ですが、蕾の形が鼓(つづみ)に似ていることから「鼓草」と名付けられたと云うことです。その鼓を打つ音をタン、ポン、タン、ポンと聞いたことから、子どもたちがタンポポと詠んだのが語源のようです。最近は繁殖力の強い西洋種が、在来種をすっかり圧倒しています。
 タンポポについて、金田一春彦氏の著書に次の一節がありました。

一世の歌の名手と仰がれた西行が、津の国へ行った時に山の奥に「鼓の滝」という美しい滝がかかっていた。一休みして、ふと傍を見ると、ひともとの花が滝のしぶきに濡れて咲いている。その可憐な風情をいとしんで、西行は「津の国の鼓の滝を来て見れば岸辺に咲けるタンポポの花」と詠んだ。すると、山林の間をかき分けて出てきた草刈りの少年が、それはまずいと言って、上の句を「津の国の鼓の滝を打ち見れば」と訂正したという。歌の上手が、一介の草刈りに教えられたという逸話だが、これなどはタンポポの語源を知ってはじめておもしろみのあじわえる話である。(『ことばの歳時記』)

以下、私にとってわかりやすい句と、わかりにくい句を。
たんぽぽの絮になる日のいつも謎  石井美穂
たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ  坪内稔典