冬菫

　今年はあちこちの紅葉を見たが、楓や櫨が真っ赤に燃えている盛りに出会わない気がする。気温が８度Ｃをくだらないと紅葉しないというが、結構寒い朝が何回もあったのに、これだ、という逆光に照るうつくしい紅葉にはお目にかかれなかった。６年前に湯布院亀の井別荘の庭で見た紅葉が過去最高の楓紅葉だった。今日、近くの西念寺の裏山の紅葉を撮りに行った。きれいではあったが。すでに紅葉の盛りは過ぎていた。
　いろいろの色の落ち葉が散っている草むらに、菫の花を見つけた。さほど日当たりの良くない草むらの中に、清楚な紫の花を咲かせている。更に進むと、日だまりの草むらにもうイヌフグリが数粒咲いていた。薄紫の星くずが零れているようだった。冬至、小寒、大寒を耐え抜いて、２月４日の立春までにはまだ２ヶ月もあるのに、何とも気の早い草花たちをもう咲かせてしまったのは、このところの小春日和のいたずらであろう。明日、明後日の雨の後はまた寒波がやってくるらしい。

ふるきよきころのいろして冬すみれ　　飯田龍太