Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳



このほど、第1回APU落語研究会主催の「天空落語会」に行く機会を得た。テレビでは落語の口演を見聞きしたことはあるが、ライブは初めてである。しかも、寄席囃子の実演解説付きで、落語3題、紙切り、太神楽・曲芸という、末広亭鈴本演芸場並みの寄席である。太鼓や三味線のお囃子も目の前で生で聴くと、テレビより迫力が違う。二つ目一人、真打ち二人の落語の話芸・仕草芸など、扇子や手ぬぐいでの見立ての使い方が実に迫真の演技で、たとえば、うどんを食べるシーンでは湯気が見え、匂いが届くほどであった。芸人が高座に上がるときのお囃子(出囃子)に、それぞれの芸人さんの持ち曲があるとは知らなかった。この日のトリの柳家権太郎は「金比羅」の曲に乗って高座に上がってきた。三味線の松尾あさは、江戸落語のすべての芸人さんの出囃子を暗記しているそうだ。
 故柳家金語楼は高座に上がっただけで、何も言葉を発しないうちから観客はげらげら笑ったそうだが、噺家は顔の表情も既に芸のうちなのだろう。ひとたび座布団に座れば、扇子と手ぬぐいだけであらゆる時代の人間や、時代・風俗・人情を描いてみせ、観客の想像力を無限にかき立てる落語という芸能の奥深さは計り知れない。2時間たっぷりしかも無料で見られた寄席演芸、いささか癖になりそうだ。恥ずかしながら、この寄席までは柳家権太郎を知らなかった。以後、金比羅舟々の三味線が鳴り始めたらテレビの前に座ろう。