Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

小春日和

小春日和

 今日は典型的な小春日和である。敷き布団を干した。こんな日には、松本たかしの句「玉の如き小春日和を授かりし」を思い出す。昨日に続き、倉嶋 厚さんの『季節よもやま辞典』(東京堂出版)から。

 「冬の愛想」 
 「村々は茶色に霞む小春かな」(涼袋)、「古家のゆがみを直す小春かな」(蕪村)。
 厳しい寒さを前に冬支度をするころ現れる小春日和。江戸時代の本には小春日和は「冬の愛想」だと記されています。
 これと同様の天気は外国にもあり、人々に愛され、さまざまな名前で呼ばれてきました。。アメリカのインディアン・サマーは辞書では「米国小春」と訳され、ドイツ語の「老婦人の夏」、ロシア語の「女の夏」にも小春日和の訳が当てられています。
 また、イギリスの11月の晴天は「聖マーティンの夏」と呼ばれています。聖人マーティンの祭日は11月11日です。日本で「つかの間の春」と感じる天気が、高緯度の中欧・北欧やアメリカ北部で夏と呼ばれるのは、気候の違いです。
 小春の季節が過ぎて冬になっても、時折、小春日和に似た、「冬麗(ふゆうらら)」の天気が現れます。英語の辞書には「ハルシオンの日々」という言葉がのっており、「冬至前後の穏やかな二週間」と記されています。ハルシオンは、この頃海上に浮巣を作り、卵をかえすと想像されたカワセミ科の鳥で、ギリシャ神話に出てきます。なお、シェークスピアの作品では「ハルシオンの日々」は、前記の聖マーティンと結びつけられています。
 人生にも小春日和があります。いま自分ができる冬支度をしたら、いたずらに明日の北風を恐れることなく、静かな一日を過ごしたいものです。(’93,11,26)