Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

「春」春を拾う

 3月中旬の陽気を思わせる今日、いつもの散歩コースにデジカメをぶら下げ、早春の息吹を拾い歩いた。近くのNさんが畑仕事をしている脇のイノシシ除けの金網に、ジョウビタキ(尉鶲)がとまっていた。

家の近くでよく見かけるが、この鳥は群れをなさず単独で行動する。今日もこのオスだけであったが黒い羽根に白い紋があるのがあるので、モンツキという異名がある。秋に日本にやってきて春の終わりに北へ帰る。俳句では秋の季語である。お辞儀をしてヒッヒッカタカタと鳴く。
 今朝も来て一礼二拍じょうびたき 耶馬溪
  

一般にイヌフグリといわれているが、命名の由来となった在来種はほとんど見かけず、今見られるのはヨーロッパ原産で明治期に帰化したといわれるオオイヌフグリである。高濱虚子が「犬ふぐり星のまたたく如くなり」と詠んだとおり、星が散らばっているように可憐で美しい。命名の由来はよく知られているように、花ではなくその実が犬のふぐり、つまり犬の「○○たま」に似ているからというもの。今は在来種のイヌフグリが絶滅状態なので、花も実のふぐりもお目にかかったことがない。ならば、在来種がほとんど見られず花も実のふぐりも目にすることできないからということと、花の姿に対してかわいそうであまりにも無粋な名前じゃないかいうことから、イヌフグリの名を返上して「ホシノシズク」と改名してはどうだろうか。緊急動議!の気持ちで提案するものである。


棚田の脇の梅林にメジロの群れが来て、しきりに梅の花の蜜を吸っていた。メジロは意外にも夏の季語である。
 見えかくれ居て花こぼす目白かな 富安風生

     
 ホトケノザは日当たりのよい道ばたに赤紫の花を咲かせている。葉が上から見ると仏さまの台(うてな)のように見えることから命名。これは春の七草ホトケノザではない。七草の方のホトケノザタビラコのことで、こちらは早春に黄色い花を付け、両者は全く似ていなくて、前者はシソ科、後者はキク科で全く異種である。赤紫のホトケノザは畠の雑草として嫌われもする。我が家の狭畠にもすぐはびこるので困るが、根が張らないのでいたって抜きやすい。
 
      
近くの公衆電話ボックスの足元にスミレ(菫)を見つけた。コンクリートの隙間の、土の全くなさそうなところに、健気にひと株咲いている根性スミレだ。
 菫程な小さき人に生まれたし 夏目漱石 




近くの日豊線の線路脇にもうツクシが頭を出していた。ツクシはトクサ科の多年草スギナ(杉菜)の胞子茎で、地下茎で栄養茎のスギナとつながっている。頭(胞子)の部分が毛筆の穂に似ているので土筆と書くが、イヌフグリと違って、その宛て字はむべなるかなと納得。
 おひたしにすると早春の野趣を味わえるが、袴を取るのが面倒であまり食べたことがない。先日、親戚から生活習慣病の予防や治療に効くからとスギナの干したものが送られてきた。煎じて飲み始めたが、霊験あらたかかどうかはまだわからない。
 約束の寒の土筆を煮て下さい 川端茅舎
だんだん馬齢を重ねるごとに寒さがこたえ、春の来るのが待ち遠しい。