Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

 秋の七草

   
   おみなへしといへばこころやさしくなる 川崎展宏 
オミナエシは女郎花と書き、オトコエシ(男郎花)と同じくオミナエシ科の多年草。黄色い花がオミナエシで、白花がオトコエシ。
オミナエシ秋の七草の一つだが、秋の七草春の七草に比べて何となく出る幕が少ない気がする。春の七草七草がゆとして毎年正月七日に食べられて、スーパーの店頭で目にすることができるからだろう。だから日本人たるもの、「セリ・ナズナゴギョウハコベラホトケノザスズナスズシロ春の七草」といって覚えている。
これに比べ、秋の七草の方は「萩の花尾花葛花撫子の花女郎花また藤袴朝顔の花」と『万葉集』にある山上憶良の歌で覚えている人はそう多くはあるまい。この憶良さんの歌はリズムに乗らず今ひとつ覚えにくいので、「ハギ・オバナ/キキョウ・ナデシコオミナエシ/クズ・フジバカマ秋の七草」と、語呂がよいように勝手に並べ替えて覚えている。
さて、憶良さんの歌の最後の「朝顔の花」だが、この頃はまだ朝顔は日本に伝わっていないので、朝咲いて夕方は萎む一日花のことを朝顔といったということだから、桔梗、木槿、昼顔であろうといわれている。今日では、「桔梗」で定着しているようだ。
春の七草はその姿形を愛でるよりは七草がゆとして食味を楽しむが、秋の七草はその姿を鑑賞し、その風雅な趣がもっぱら詩歌の題材となっている。
中でも萩の花はその筆頭である。
白露もこぼさぬ萩のうねりかな 芭蕉
青あをとうちなだれつつ繁りたる萩一叢の庭のするどさ 宮 柊二
ススキ(尾花)もよく詠まれている。
        
をりとりてはらりとおもきすすきかな 飯田蛇笏
穂芒を逆光の中振り分けて君が来るなり肩先が見ゆ 河野裕子
俳人の川崎展宏さんは昨年11月、河野裕子さんは今年8月に鬼籍に入ってしまった。展宏さんは朝日俳壇の、裕子さんは毎日歌壇の選者を長く務められていた。
ほんの一と月前はまだ残暑だったが、昨日、今日と冬のような寒さである。この分だと山々は一気に紅葉、黄葉を迎えるのだろうか。