Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

 “テロリスト”と呼ばれた男

 9.11アメリカ同時テロから9年過ぎた。ニューヨークの世界貿易センターのツィンタワーに二機の旅客機が突っ込んだあの映像は、いまだに目に焼き付いている。あれ以来当時のブッシュ大統領は“、テロとの戦い”を政策の重点に掲げ、オバマ大統領もこれを受け継いでいる。アメリカ政府はテロ容疑者を、キューバ国内にある租借地グアンタナモ米軍基地にテロ容疑者収容施設に集め、779人もの容疑者からテロリストを特定しようと躍起になっている(2009/01/28づけブログ「Himagineの日記」参照)。
9月13日の深夜、NHKスペシャルの再放送番組“テロリスト”と呼ばれた男は、テロの嫌疑が薄くグアンタナモ収容所から釈放された何人かの男たちのその後を追跡したドキュメンタリー番組であった。インタビュアーに「名前を明かさないで」とか「住んでる家には来ないで」とか、「顔は映すな」とかの条件をつけて取材に応じた元収容者たちは、地獄のような収容所生活の実態を明かしていた。
      

手枷足枷をつけられて「おまえはアルカイダか、それともタリバンか」と拷問に近い取り調べを受け、苦痛に耐えかねて事実と違う供述をさせられた。かなり前になるが、裸にされ首に鎖をつけられたテロの容疑者を女性刑務官が横で見下ろしている映像をテレビで見たことを思い出した。
 グアンタナモ収容所における拷問に近い取り調べや法的根拠の乏しい長期拘束が世界の非難を浴びたり、イスラム社会からの憎悪をますます募らせたことから、オバマ大統領は就任後1週間経ったころ、このような負の連鎖を断つために、1年以内にグアンタナモ収容所を閉鎖し収容者への拷問を禁止するという大統領令を発した。にもかかわらず、今日までこの収容所が閉鎖されてはいない。。“なしか”久しく疑問を持ち続けていたが、このドキュメンタリー番組を見てその理由がわかったような気がした。収容者を釈放しても、テロリストの疑いで収容されていた者を受け入れてくれる国や地域がなかなかないのだ。受け入れた地域は必ずしも疑われて連行されたときの地域や祖国ではない。テロリストのレッテルがついて回って危険視され、職にありつけない。従ってアメリカへの憎悪がさらに燃えさかり、テロルや自爆テロの組織へ入っていく例もあるという。収容者の中で本当のテロリストは4名しかいない(4名の数字はひょっとして聞き間違えたかもしれない)という。ほとんどの収容者が身に覚えのないまま突然逮捕連行され遠い異郷の収容所に送られて拷問を受け、釈放されたらふたたび故郷ではない異郷の地に送られ、テロリストと呼ばれて生活の糧を得ることもできない。このような状況から、彼らだけでなくイスラム社会全体から憎しみの対象となってしまうアメリカ。したがって収容者を釈放しようにも、またグアンタナモ収容所を閉鎖してほかに移すにもいい知恵がない負の連鎖、憎悪の悪循環によるアメリカのジレンマなのである。
9.11以来テロとの戦いを続けているアメリカ。なのに依然として消滅しないテロル。民族間、宗教間、国家間の紛争解決手段を武力に頼り続けている人類、もうそろそろいい知恵を出さなければ。