Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

 プランゲ文庫

 昨日15日、別府史談会の総会が別府中央公民館であった。史談会の年間事業は年三回の講演会と、市内、市外の史跡探訪会、それに年一冊の機関誌『別府史談』の発行が主なものである。これらの事業によって地方史を学べるのだから、年会費2500円は決して高くはない。
事業報告に対する質問や意見で、昨年末に出版した『別府の古い道 歴史散歩』は欲しいという人が多いが増刷しないのか、町歩きグループや学校で大いに利用すべきだ、などという声が多かったが、執筆者の一人としては嬉しかった。
総会後の講演は『プランゲ文庫に見る占領期の別府』。講師は日本文理大准教授・白土康代(しらつちやすよ)さんである。プランゲ文庫?初耳である。講演レジュメには次のように説明されている。

プランゲ文庫」は、1945年から1952年の連合国の日本占領下の時代、特に1945年から1949年にかけて発行されたすべての出版物(図書、雑誌、パンフレット、新聞)、検閲文書、ポスターなどを収集したコレクション。当時、連合国総司令部の民間検閲局(CCD)に勤務していた米国メリーランド大学教授おゴードン・W・プランゲ博士が歴史的価値に注目し、検閲終了後、米国機関で一括所蔵・保存することに努め、母校であるメリーランド大学に持ち帰った。「プランゲ文庫」は、日本の国会図書館が開館する(1948年6月)前の戦後の空白期を埋める貴重な史料ということができる。

    
この占領期の検閲文書であるプランゲ文庫の膨大な所蔵品は26,7年間放置されたままだったが、今メリーランド大学で整理されている。アメリカは50年たつと秘密文書も情報開示となり、1952年に占領が終わって50年、2002年頃からそれらを公にするための国家的プロジェクトが始まって、日本の国立国会図書館もこれらの史料のマイクロフィッシュ化に努めることとなる。早稲田大学などはこれらをデータベース化して、インターネット上でも公開しているということだ。
白土先生は2006年に「大分プランゲ文庫の会」を立ち上げ、「プランゲ文庫」収蔵の大分県の出版物を調べ上げた。雑誌110タイトル(内、別府25)、新聞266種類(内、別府53)の他、地図、書籍、行政関連、児童図書等々、膨大な数量の紙が4年の間に検閲を受けている。会報「大分プランゲの会」記録NO1には110の雑誌とその出版者の名前がすべて記載されているが、別府のものには大佛次郎・中野五郎・渡邉紳一郎・林房雄横山泰三など中央で活躍中の作家・漫画家などが寄稿している「ゴーストップ」という雑誌や、別府第一高等学校(現・別府鶴見丘高校)の「鶴嶺」、楠町青年団発行の「くすのき」、短歌の「朱竹」などさまざまの分野にまたがっている。また、別府の新聞では「泉都べっぷ新聞」、「別府タイムス」、「豊後新聞」、「ダンス新聞」、「Beppu Weekly」、「ニュー映画タイムス」等々。占領軍の別府キャンプがあったことからもダンスが栄えたのだろう。別府の規模の都市にしてはエラく新聞が多い。
戦後の占領期の庶民の意識や人々の自由への憧憬などを知る上で、この「プランゲ文庫」は貴重な歴史資料といえる。

 興味深い講演を聴くことができたが、今どきの講演は、パソコンとプロジェクターを駆使したスタイルのものに、特に若い講師の場合は変わってきた。これも時代の変遷である。一昔前までは、せいぜいスライドを使っていた程度だったが…。