Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

 『思い悠に』

 先日、1冊の画集が届いた。大学の同学部同学科の同期のTさんが描いたものだ。毎年くれる年賀状に描かれた絵を見て、なかなかの腕前だなとは思っていたが、学生時代には彼にこんな絵心があるとは知らなかった。
  
 画集といってもB5版大の僅か44ページの体裁のものだが、上の表紙絵のように、野菜や果物などのみずみずしい姿を色鉛筆で描いた20枚の絵に、短い文章を添えた中身は彼の体温がそのまま感じられる、すばらしいものである。
  
野菜は夫婦仲良くつくっている。タマネギは奥さんの昌子さんの自慢の作という。 
  
入院中に友人から届けられた栗の毬。病床にあって、毬の1本いっぽんまでこんなに細密な画が描けるとは、恐れ入る。単なる観察眼の鋭さだけでなく、対象への愛おしみ、優しさがなければ描けるものではない。
  
 

   道端の草花
 散歩の帰り道、 
 道端に群がっている「えのころぐさ」を抜いてきた。
  
 子どものころ、 
 女の子の首筋を穂先でくすぐって遊んだものだ。
 きっと、その子が好きだったのだろう。
 誰だったかは、忘れたが…。

 家に帰って、スケッチした。
 「こんな草も、絵になるのね」と、
 昌子は、ちょっと感心したように言った。
 万物すべて美しい。

 この画集は、入院中の手すさびに描いた「小かぶ」を奥様の昌子さんに褒められたのがきっかけでスケッチし始めたことからできたと、冒頭に書かれている。正岡子規の『仰臥漫録』を彷彿とさせる画集である。彼は今なお闘病中であるが、体調のよいときには変わらず晶子さんと野菜を作り、自然を愛で、色鉛筆を離すことはないであろう。ひそかに次作を期待しているところである。
 自分も来年古希を迎える。これを機会に、あちこちに書き散らした駄句を集めて1冊にまとめてみようと思いながらずっと怠けているが、Tさんからいただいた温かい手作り感に満ちたこの画集を開いて、触発されそうだ。
 旧友の画集うれしき冬初め