Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

 ピアノ・ソナタによる朗読劇月光の夏

 今日、別府ビーコンプラザに表題の朗読劇を観に行きました。「月光の夏」については6月9日のブログに書きましたが、本のあらすじは次の通りです。
  
 佐賀県鳥栖市―。戦後45年のこの年、鳥栖小学校の古いグランドピアのが廃棄されようとしていました。かつて教師をしていた吉岡公子は、そのピアノに忘れられない想い出がありました。そしてピアノを平和の願いの証として保存しようという思いから、全校集会で生徒たちにその想い出を語ります。その想い出とは―。  
 太平洋戦争末期の昭和20年初夏、既に日本の敗色は濃く本土の都市は連日米軍機B29の空襲に晒され、沖縄は「鉄の暴風」ですでに焦土と化し、日本陸海軍は米軍艦船に対し戦史上例のない特攻作戦をとり若い特攻隊員たちは連日爆弾を抱いた機で出撃していました。5月、高等女学校を終えたばかりの代用教員吉岡公子は鳥栖国民学校の5年2組の担任教師でした。その日校長に呼ばれた吉岡の前には、20歳ぐらいの二人の若者が立っていました。「自分たちは目達原(めたばる)基地の特攻隊の者です。明日、発ちます。時間がありません。お願いであります。ピアノを弾かせてください。死ぬ前に一度思いっきりピアノを弾かせてください。」二人は、大方の学校にオルガンしかないときに、珍しく鳥栖国民学校にはグランドピアノがあると聞いて、12,3キロの道のりを長崎本線の線路づたいに走るようにやってきたと言います。一人が楽譜をめくり。長身の、上野の音楽学校の学生だったという青年が、吉岡が差し出した楽譜・ベートーベンのピアノソナタ第14番嬰ハ短調「月光」の第1楽章を弾き始めます。闇の雲間からもれる月の光のように、時にほの明るく、或いは暗く、沈鬱に流れる調べは熱情を潜めてリフレインし、やがて静かに高揚する。隊員はときおり祈るように瞑目し、ひたむきに弾き続けます…。(『月光の夏』毛利恒之著・講談社文庫)
   
 今日の朗読劇は、黒衣の男性2人、女性2人が複数の登場人物の台詞を朗読し所作を演じます。そしてピアニストが「月光」を演奏します。衣装は特攻兵を演じる時につける航空帽だけで、極度に単純化された演出が観客の想像力を広げる新機軸のライブステージでしたが、本を読んだときとはまた違った感動をおぼえました。 
会場は中高年の女性が圧倒的な数を占めていましたが、チケットの販売ルートにそのような偏りがあったのでしょうか。戦後派の、特に若い方に是非観て欲しいステージでした。八月前の企画というのはタイムリーでした。この朗読劇は別府市民劇場5周年記念公演ということですが、すばらしい公演を実現された実行委員会、スタッフの方々ありがとうございました。
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演出・脚本  毛利 恒之
演出     鈴木 完一郎
キャスト   南保 大樹 ・能登 剛 ・ 江上 梨乃 ・ 岸浪 万里子
ピアニスト  植田 伸子
   

さまざまなこと思い出す八月来