Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

長谷川 櫂(かい)さん 

      
   
1954年生まれ。俳人。俳句結社誌『古志』主宰。「季語と歳時記の会」代表。東京大学法学部卒業後読売新聞社入社、22年勤めて俳句に専念するため退社。俳論集『俳句の宇宙』でサントリー学芸賞、句集『虚空』で読売文学賞受賞。『長谷川櫂全句集』(花神社)、『俳句的生活』(中公新書)、『国民的俳句百選』(講談社)、『古池に蛙は飛び込んだか』(花神社)などの著書。朝日新聞歌壇選者、読売新聞に「四季」連載中。NPO法人で「インターネット歳時記」を運営。NPO法人で「山桜百万本植樹計画」運営中。その他週刊誌、月刊誌、単行本の原稿執筆、テレビ、新聞での選等、八面六臂のご活躍中。今年は少しゆっくりしたいと、年賀状に「とこしへの牛の歩みを今年より」と書いたそうですが。
 くどくどと櫂さん(と気安く書きましたが、櫂未知子さんという俳人がいるので)、長谷川櫂さんは55歳です。スポーツ選手なら引退後の監督さん級ですが、俳句の世界では《気鋭の》俳人だそうです。年齢的にはベテランでも、若手でもないので「中堅」なのでしょうが、彼の俳句や著書に接するとなるほど《気鋭》か、とも感じます。『俳句的生活』を読むと、彼の文章は俳句に限らず、古今東西の短歌や詩など守備範囲が広く、多くの引き出しから取り出す調味料に味付けされたまことに味わい深いものがあります。手元に読売新聞に連載された「四季」の1年分を加筆・訂正して編んだ『四季のうた』がありますが、その中から二つ引用します。
      
 

みちのくも伊達も懐かしい土地の名前。福島市一帯の穀倉地帯が伊達の郡。伊達家の先祖が源頼朝から拝領した土地である。残雪の山々に囲まれた盆地を阿武隈川は北に流れる。やがて田んぼに水が張られ、夏には一面の青田に変わる。
みちのくの伊達の郡の春田かな 富安風生

 如月の望月、旧暦二月十五日は釈迦の命日。その日が桜の満開と重なる頃に死にたいというのだ。西行が亡くなった文治六年(一一九〇年)二月十六日は太陽暦三月三十日。願いどおり花のもと、望月の頃だった。
ねがはくは花のしたにて春死なんそのきさらぎの望月の頃 西行

読売新聞を購読している方は、毎日このような珠玉の句歌をわずか120字で解説、鑑賞した名文を読むことができるのですね。うらやましい。