Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

啓蟄

      

午後になってまた降り出しました。
降り始めまた春霖となりにけり
季節・天候・気候・天気を考えるときについ開いてみたくなるのが、倉嶋厚さんの著書です。『季節よもやま辞典』、『日和見の事典』、『季節みちくさ事典』の3冊はいつもすぐ手元にあります。倉嶋さんのHPに、応募した「烏瓜の写真」が採用されてから、何だか倉嶋さんへの親しみの距離が近くなったように感じたりして、ブログにも何度か勝手にご登場願っています。今日は『季節よもやま辞典』から抜かせていただきます。

白いチョウ 白い花
 三月六日から二十日までが二十四節季の啓蟄、「冬ごもりの虫がはい出る季節」です。大漢和辞典によれば、蟄の第一の意味は「隠れる」です。蟄居は「虫などが地中にこもっていることから転じて「退いて家にこもること」、武士の刑罰の「一室に蟄伏謹慎すること」の意味になりました。蟄竜は「隠れている竜」転じて「時を得ない英雄」。蟄雷は冬ごもりの蟄虫の目を覚ます春の最初の雷、「虫出しの雷」です。(中略)気象庁の生物季節観測の統計によれば、モンシロチョウの初見平均日が三月二十日以前になっているのは、南西諸島、九州。四国の大多数の気象台・測候所と、甲府、銚子、静岡、広島などの気象台です。
 昨年の私の日記を見ると、三月六日、東京ではコブシが毛皮の外套を脱いで、白い肌を見せ始めている」、「三月八日、確定申告に行った税務署の近くでハクモクレンの花が印象的」などと記されており、三月下旬には小豆島で真っ白なスモモ畑を見ています。 
 前期の季節記事は、日本の南半分の平地の季節にあてはまるようです。(94,3,7)

      

今から少しずつ暖かくなると、いろんな虫が出てきて家の中にも時々ゴキブリやアリの訪問を受けます。そして我が二人家族の私以外の一人がギャーギャー騒ぎ始めます。彼女は虫という虫が大嫌いなのです。夏になって硝子にとまった蛾を食べてくれる、あの、目のかわいいヤモリにさえ、恐怖と敵意を燃やします。時々見かけるムカデは私も決して歓迎しませんが、彼女はあらゆる虫や小動物を蛇蝎の如く嫌悪します。ゴキブリを見つけたら、裂帛の気合で一撃します。その形相に気の弱い私はビクッと身を震わす程です。我が家にくっついて庭畑があり、しかもすぐ裏が森なので否が応でもいろんな虫さんの訪問を受けやすいのです。
 「そう嫌わんでも、〈虫めづる姫君〉になれとは言わんが…」「なによそれ」 高校の古文に出てきた片言隻語を思い浮かべました。ついでに調べると、『堤中納言物語』の「虫めづる姫君」でした。普通の娘は蝶を愛でますが、この姫君は毛虫を愛で飼っているというお話です。化粧もせず身だしなみも気にとめずひたすら虫を可愛がるといううら若き御姫様です。わたしの連れ合いがこうまでなっても困りますが、山奥の田舎生まれの田舎育ちの私は、ムカデや蜂のように刺したりしなければさほど気なならない虫たちなのです。庭畑には毎年腐葉土を入れて、ミミズの増えるのを楽しみにしています。だから鍬でミミズを真っ二つにしたときなどは、「なんまいだ」と手を合わせて土に埋め戻します。啓蟄と聞けば虫だけでなく、生き物すべてが両手を挙げ、背伸びをする季節です。