Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

 くきが続けば…



 ヤレ そうらん そうらん
 沖の鴎に 潮時きけば
 私ゃ立つ鳥 波にきけ
 チョイ ヤサエーヤー ドッコイショ
 
 くきが続けば 千両や万両
 網も鰊で 銀の色
 
 玉の素肌が しぶきに濡れりゃ
 浮気鴎が 見て騒ぐ

おなじみ、北海道民謡の「そうらん節」です。2番の歌詞の冒頭「くきが続けば…」の「くき」は「群来」と書きます(ただしPCの変換では出てこない)。早春の頃、産卵のため鰊の大群が北海道の沿岸に押し寄せてくる事を意味するが、漢字で書くと情景がわかりやすいなあ。先だってテレビで、小樽の海岸が一面真っ白になっている情景を見たが、あれは鰊が放出した卵の色が海面を染めた久しぶりの「群来」なんだそうです。一昨日の北海道新聞のコラム「卓上四季」が≪群来復活≫というタイトルで書いていました。それによると、札幌生まれの作家・島木健作が戦前の小樽周辺を題材にした「鰊漁場」で《鰊の大群が近づくと、海面は異様なふくらみを見せてもりあがってきた》と書き、《漁夫達たちは勇躍して鰊を汲みはじめた》と描写しています。鰊を捕る舟は「汲み舟」と言い、漁師は短時間でこの舟に汲めるだけ汲んだのです。そして、大もうけした沿岸の網元たちは「鰊御殿」を建てました。
 ところが、1954年を最後に群来はぴたりと途絶えてしまいます。40年後の1999年、群来は留萌で久しぶりに見られ、2004年には焼尻島で、昨年は小樽でそれぞれ1回ずつ記録されています。今年は小樽港近くの海岸で5回にわたり記録されました。道立中央水産試験場によると、複数回の群来の記録は実に55年ぶりということです。年に百万トン近くを水揚げした全盛期とは比べものにならないが、死語になりかけた「春告魚」の復権につながるとよい、とコラムは結んでいます。

さて、我が男声合唱団豊声会の愛唱曲・清水脩男声合唱曲『日本民謡集』の「そうらん節」では、「くきが続けば千両や万両」の部分はベースのパートソロになっていて、つづく「網も鰊で銀の色」をセカンドのパートソロで歌います。群来の情景をまなうらに描きながら歌いたいと思います。