Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

柴石温泉


 わが家から車で8分のところに、別府八湯のひとつ市営柴石温泉がある。江戸時代に柴の葉の化石が出土したことから、この名があるという。その昔、醍醐天皇後冷泉天皇が湯治に訪れたという伝説があるが、確かな史料はない。近代になってからもこの地は「幽邃(ゆうすい)静寂の仙境」といわれてきた。明治9年の『豊後国速見郡村誌』の野田村の項に次のように書かれている。
 「柴石渓 村西字柴石ニアリ、風景幽酔ニシテ、傍ニ温泉アリ、渓流木葉ヲ印セル化石ヲ出スニ、依テ此ノ名アリ、実ニ名勝絶幽ヲ以テ称セラル…湯質鉄気ヲ混ス、疥癬諸症ニ宜シ…壱カ所蒸気盛ニシテ、湯坪ノ上ニ木ヲ敷キ、上ニ四方ニ石ヲ構シ、窟室ノ形状ヲナス、壱戸穿チ浴客ノ出入ヲ通シ、浴客其中ニ臥ス、能ク解凝シ腰痛仙病に宜シ、此地渓水温泉ノ傍ヲ流レ、景幽邃、愛ス可シ」
 今、この蒸し風呂はなく、その遺構が駐車場の傍にあるだけである。明治35年刊の『豊後御越町志』には滝湯の記述がある。
 「北の厳石を鑿(うがち)て浴地となし、泉源は浴場の西側より発す、加ふるに筧を以て清水を泉地に引き、温熱度を自由ならしめ、南渓に臨み温を厚す、其数六流にして高さいずれも十尺、其流力各差異アリ、浴者其流力の強弱を撰み、腹背四肢等を打たしむ、其温度人体に適し、頗る快を覚え…」
 柴石川の横の滝の打たせ湯は、度重なる水害で流されては再建されたが、今は湯量の激減のため開店休業状態であり、残念である。蒸し湯の現在は、露天湯の傍にサウナとして姿を変えて再現されている。
 柴石温泉は平成六年、環境庁から「ふれあいやすらぎ温泉地」に指定された。平成九年、篤志家による近隣用地の寄付により大幅にリニュウアルされ「柴石自然ふれあい温泉館」に改装された。
駐車場は30台ぐらいは停められるが、県道から柴石に向かう100メートルほどの道幅が狭いので要注意。正月三が日は別府名物ザボンを室内湯、露天湯、家族風呂ともに浮かべてくれる。210円の入湯料にしては、サービス満点である。