Himagine雑記

思いついたときに気ままに書く雑記帳

 別府短歌大会・俳句大会

     
 NHK学園生涯教育学習フェスティバルが毎年地方都市で開催されている。別府市で開かれるのは、市政80周年記念として平成16年に初めてて開催されて以来、今年で4回目である。別府では、短歌大会と俳句大会が土曜日と日曜日に中央公民館で続けて開催されるのが恒例となっている。
  短歌も俳句もそれぞれの選者6人が、それぞれ特選3首(句)、秀作20首(句)を選び、これらの短歌や俳句は既に入選作品集に印刷された冊子となって、大会参加者が受付で受け取り読むことができる。
短歌大会:7月4日(土)      
 事前の投稿数は自由題・題詠合わせて2882首に及び、投稿者の年齢は多い順に70歳代、60歳代、80歳代で、最高齢者は96歳であることが事務局から発表された。
     
 挨拶のあと、6人の選者の紹介があった。選者の一人は地元の歌人であるが、今回も今までに続いて大分県歌人クラブ会長、「朱竹」代表の伊勢方信先生。選者紹介のあと、宮崎市歌人伊藤一彦先生の「心にむきあう短歌」と題した講演があった。後半は、6人の選者が選んだ特選3首と秀作の中の数首についての選評があった。多くの歌の中で特に印象に残ったのは次の歌である。
泥を押しブルドーザーが唸り上ぐああ又ひとつ田ん圃消えゆく (福岡 武谷忠義) 
無精卵孵るいのちを疑はぬインコの母性終日を抱く (大分県 宇都宮せつ子)
教育的指導誘導御節介右上隅に「アナログ」の文字 (宮城県 角田正雄)
口開けて売らるる鯖よ海中で何か叫んでいたかもしれぬ(大分県 浅野富美江)
 第2回の平成17年の時には石田比呂志先生に秀作を戴いたが、今回は投稿するのをを忘れていた。
俳句大会:7月5日(土)
 事前の投句数は自由題・題詠合わせて5699句で、昨日の短歌の2倍の数である。1900人超の投句者のうち大分県は269人、投句最高齢者は96歳、特選18名の平均年齢は77歳超とのことである。
有馬朗人先生の講演「わが来し方と俳句」は、13ページにわたるレジメに基づいて話された。極貧生活、アルバイト時代、東京大学で物理学を学び研究する傍ら、俳句を山口青邨似学び、東大総長から文部大臣を務めても猶俳句とともに人生を歩み今日に至っている過程を話された。物理学と俳句と教育行政をやってきたが、後輩には一芸に徹せよと言っているそうだが、自身、まだあと30年は生きるつもりで100歳になったら句集「古稀」を出版する予定だと、矍鑠たるものである。そういえば70歳の時に出した句集の名は古稀ではなく「不稀」である。指定時間47分きっちりに終えるところなど、いかにも物理学者らしい。「秋風に我が直したるラジオ鳴る」が、15歳の時に詠んだ最初の俳句だそうだ。
     
 後半は6人の選者によって選ばれたそれぞれの特選句の披講と、選者による選評であるが、この司会は、別府市俳人・「蕗」主宰の倉田紘文先生が務められた。
多くの佳句の中で特に印象に残ったのは以下の句である。
嬰の髪つまんで結ひぬ初桜(東京 田中文子)
集金へはっしとひらく春日傘(鹿児島 上野ミチ)
阿蘇のまこと芋田楽の大(大分県 大蔵和子)
更衣片へに妻のなかりけり(佐賀県 畑津壽一)
金魚鉢向うに不意に少女の目(埼玉県 小川 滋)
大坊主小坊主地獄夏の月(大分県 山内小次郎)
大蔵和子さんと山内小次郎さんの句は題詠「大」の句であるが、山内小次郎さんは84歳とか。有馬先生も講演の中で、「年を重ねるほどに俳句は円熟する」と話されたが、まさにしかりだと思う。選者の伊藤通明先生も「俳句はうまくなければならない。そのためには長生きしなければならない」といわれた。
別府大会の最初の平成16年に、倉田紘文先生に特選にとって戴いて以来ボツつづきである。私の場合は、年を重ねるごとに感性が鈍くなっていくようだ。(今回は、伊藤先生にやっと1句佳作に拾って貰ったが)
 
短歌大会も俳句大会も、主催はNHK学園・別府市別府市教育委員会、共催NHK大分放送局であるが、NHKの生涯教育フェスティバルの行事としてNHK学園が各県の観光地(特に温泉地)を持ち回りで行っている。今年も別府観光を兼ねて短歌や俳句の愛好者たちが参加していたようで、会場でもあちこちのお国言葉を耳にした。余裕があったら他県の大会にも行ってみたいものだ。